「PTSD」という言葉を知っているでしょうか?
PTSDとは、「Post Traumatic Stress Disorder」の略で、日本語では「心的外傷後ストレス障害」といいます。「トラウマ」と言われることもあります。
心的外傷後ストレス障害(しんてきがいしょうごストレスしょうがい、Posttraumatic stress disorder、PTSD)は、命の安全が脅かされるような出来事、戦争、天災、事故、犯罪、虐待などによって強い精神的衝撃を受けることが原因で、著しい苦痛や、生活機能の障害をもたらしているストレス障害である[1]。
このPTSDとADHDの症状は共通点があり、時々混同されることがあるようです。
障害を治療するさいに、ADHDなのにPTSDだと間違われたり、PTSDなのにADHDだと間違われると問題ですよね。
そこでADHDの専門家による「PTSDとADHDの違い」を紹介します。
目次
ADHDとPTSDの共通点
ADHDとPTSDは略語が4語
ADHD:「Attention Deficit Hyperactive Disorder」
PTSD:「Post-Traumatic Stress Disorder」
ADHDとPTSDになる人についての誤解
「ADHD」の症状で問題となるのは「子供」が多いと思われています。しかしADHDの大人も多くいます。
「PTSD」は「兵士」がなると思う人が多いようです。しかし戦場以外の状況でもPTSDは生じます。また子供を含めたすべての年齢の人がPTSDになります。
ADHDとPTSDは「最近作られた障害」という誤解
「ADHD」と「PTSD」という言葉は最近になって出てきたものですが、その障害自体は何世紀も前からありました。
「ADHD」と「PTSD」という「言葉」が現れる前に、同じ障害に対して使用されていた言葉は以下です。
ADHD:
・精神不穏(Mental restlessness)
・多動衝動性障害(Hyperkinetic Impulse Disorder)
・子供の道徳的コントロールの異常欠陥(Abnormal defect of moral control in children)
・注意欠陥障害(Attention Deficit Disorder)
PTSD:
・砲弾ショック(Shell shock)
・戦闘疲労(Combat exhaustion)
・消耗した心(Exhausted heart)
・戦争緊張(War strain)
・戦争神経症(War neurosis)
共通の症状
PTSDとADHDの症状には共通点がいくつかあります。
・注意欠陥
・気が散りやすい
・落ち着きのなさ
・忍耐力のなさ、せっかち
・衝動性
・怒りやすい
・睡眠障害
・記憶力の悪さ
・集中力の悪さ
・不安
・うつ状態
・低い自己評価
・依存症
・恥を感じやすい
ADHDとPTSDの相違点
原因
ADHDの原因:正確な原因はいまだによくわかっていません。ADHDの人の脳は、解剖学的、化学的、および機能的違いがあることがわかっています。
PTSDの原因:衝撃的な出来事の後に起こる不安の形
症状
ADHD:「多動性」「衝動性」「注意欠陥」など
PTSD:「過覚醒(常に脅威に対して目を光らせている状態)」「サバイバーズ・ギルト(自分だけ生き残ったことへの罪悪感)」「過去のトラウマ経験と同じ状況を避ける(トラウマがフラッシュバックするため)」「強迫観念」「(身体が原因ではない)関節や筋肉の痛み」
ADHDとPTSDの類似の症状での相違点
ADHDとPTSDには一見すると同じに見える共通点がいくつかあります。しかしその原因は異なります。
「不注意」と「多動性」は複合型のADHDの主な特徴です。
しかしPTSDの人の中には過去のトラウマのフラッシュバックが原因で、不注意や過覚醒の生じる人がいます。
「衝動性」「怒りっぽさ」「記憶力の悪さ」「集中力の低さ」「睡眠障害」などの症状は、「過覚醒」が原因で生じるのです。
治療方法の違い
ADHDの改善方法:ADHD治療薬(コンサータやストラテラ)、認知行動療法、コーチング、ライフスタイルの改善や対処スキルの向上などがあります。
PTSDの改善方法:トラウマに焦点を当てた「認知行動療法」が特に役に立ちます。
薬はうつ病などの二次的症状のために処方されることがあります。「EMDR(眼球運動脱感作と再処理)」と「リラクゼーション」のテクニックも非常に役に立ちます。
ADHDの診断では、過去のトラウマの経験を詳しく聞かれることはありません。もし万が一PTSDの可能性があると思われるなら、専門家にそのことを伝えましょう。
参考記事:PTSD vs. ADHD