コーヒーを飲むと脳がすっきりする感覚はありませんか?これはコーヒーに含まれるカフェインによる効果なのですが、このすっきりする、目が覚める感覚は、ADHDの症状にも効果があるのでしょうか?
結論から言うと、今のところコーヒーによるADHDの改善効果は実証されていないようです(動物実験では効果が証明されています)。
したがってコーヒーをADHDの治療として用いること(特に子供に対して)はマイナスの効果をもたらす可能性もあるようです。
目次
コーヒーはADHDの症状を改善する?
中枢神経系を刺激する薬は、ADHDの症状を改善するために最も一般的に処方される薬です。
そしてまた、カフェインも中枢神経系を刺激する成分の一つです。
それではカフェインはADHDの症状を改善するための代替品となるでしょうか?一日数杯のコーヒーは集中力と注意力を改善するのに効果的なのでしょうか?そしてADHDの子供の衝動性または多動性を改善できるのでしょうか?
カフェインはADHDの「動物」については効果あり
神経精神薬理学の国際ジャーナル(2005)によると、カフェインはADHDの「動物」(多動性、衝動性、注意欠陥、学習と記憶のプロセスの欠損といった症状を持つADHDの「マウス」)では効果があることが証明されています。
この研究ではカフェインがADHDの症状を持つマウスの「学習」や「記憶障害」を改善することが明らかになりました。
また神経科学ジャーナル (2011)に掲載された研究でも、ADHDのマウスに対する「多動性」および「注意欠陥」へのカフェインの効果が認められています。
この研究によると、多動性についてはカフェイン投与の前後で変化はありませんでした。しかし注意不足に関しては、カフェイン投与後に大きな改善があったことが明らかになっています。
カフェインは無害な成分ではない
動物の実験では、カフェインがADHDを改善する効果があることが明らかになっています。
しかしそれでもなおADHDに対するカフェインの効果についての研究はまだ十分行われていないのが現状です。
私たちはカフェインを「無害な物質」として考えがちです。カフェインはコーヒー、お茶、ココアなど、私たちが日常よく口にするものに自然に入っているからです。
しかしカフェインは薬であり、中枢神経興奮薬でもあることを忘れていはいけません。
カフェインは特に子供のADHDには有害な面も多い
実際、多くの小児科医はADHDの治療としてカフェインを使用することに警告を発しています。
カフェインはメチルフェニデートやアンフェタミンといったADHD治療薬よりもADHDに対する改善効果が少ないのです。
カフェインの効果が持続する時間は短い
またカフェインはADHD治療薬と比べると、その効果が持続する時間は短いことが明らかになっています。
したがってどんなに強力な効果があってもそれが持続する時間は短いのです。
カフェインの影響は子供のほうが受けやすい
多くの刺激成分と同じように、カフェインを大量に摂取すると、不安や、落ち着きの無さ、不眠、胃の痛み、および頻脈のようなマイナスの副作用が生じます。
そして子供たちのほうが大人よりもその影響を受けやすいのです。
現時点ではADHDの子供に対するカフェインの効果についての情報は不十分なものが多いです。
したがって、ADHDの治療はすでに効果と安全性が証明された行動療法と、適切に処方されたADHD治療薬(刺激薬)が一番効果的のようです。
またカフェインフリー、カフェインレスのコーヒーも多数販売されています。カフェインが心配な人はこちらを利用してみてはいかがでしょうか。
参考記事:Coffee for ADHD?