ADHDは一般的に子どもの頃に発症するものです。
厚生省の定義だと「7歳までに」とされています。ADHDの診断を受けるときにも、子ども時代のことをよく調べられるはずです。
しかし最新の研究で、大人になってから初めてADHDを発症する「遅発型ADHD」が存在する可能性がわかりました。
これはアメリカの医師会の精神医学専門誌に発表された論文で、イギリスとブラジルのそれぞれの研究チームによるものです。
それぞれが独立した論文であるにもかかわらず類似の結果が出ているのが興味深いですね。
記事によると、子どもの時にADHDと診断された大人の患者の割合は少なく、また子どもの頃にADHDの症状が出て、それが成人になっても続いているADHDの患者も少ないそうです。
ADHDは子どもの頃に症状が現れる障害だと考えられているが、研究チームの追跡調査によると、子どもの時にADHDと診断された大人の患者の割合は12%。
また、成人してからも引き続きADHDの障害がみられた子どものADHD患者も17%と少数だったという。
参考記事:大人になってから「多動性障害」発症の可能性も?研究結果が話題に
また興味深いのは、「子供のうちに発症するADHDと成人になって発症する「遅発型ADHD」はそれぞれ異なる原因で発症する思われると説明」という点です。
一般的に、ADHDの原因の一つは「遺伝」と言われますが、大人になってからADHDの症状が出る「遅発型ADHD」は、遺伝的要因の可能性が低い可能性があるとのことです。
さらに、子供のうちに発症するADHDと成人になって発症する「遅発型ADHD」はそれぞれ異なる原因で発症する思われると説明。
大人になって発症するADHDは子どもの頃に発症するADHDよりも遺伝的要因の可能性が低いことなども分かったという。
これらのことから、大人になって症状が出る「遅発型ADHD」は独自の疾患である可能性が示唆されるという。
参考記事:大人になってから「多動性障害」発症の可能性も?研究結果が話題に
また、他にも子どもの時に発症したADHDと遅発型のADHDには違いがあり、遅発型のADHDは「発症率が男女で等しい」「不安神経症やうつ病、マリフアナやアルコールの依存症などの罹患(りかん)率が高いこと」が特徴です。
研究ではまた、双子のデータの分析から、成人期ADHDが、小児期ADHDに比べて遺伝的要因の可能性が低いことと、発症率が男女でほぼ等しいことも分かった。一般的に、小児期ADHDは、男児の方が発症率がはるかに高い。
さらに、英国の研究チームは「遅発型のADHD患者は、不安神経症やうつ病、マリフアナやアルコールの依存症などの罹患(りかん)率が高いことが、今回の調査で明らかになった」と付け加えている。
参考記事:注意欠陥多動性障害、成人期に発症も 研究
まとめ
- 大人になってから初めてADHDを発症する「遅発型ADHD」が存在する可能性がある
- 遅発型ADHDの原因は、子どものうちに発症するADHDの原因とは違う
- 遅発型ADHDは、遺伝的要因の可能性が低い
- 遅発型ADHDは、発症率が男女で等しい、依存症などの罹患(りかん)率が高い
特に気になったのは、遅発型ADHDの原因は遺伝的要因の可能性が低い点です。遺伝ではないとすると、改善できる余地が増えそうです。
また、遅発型のADHDがADHD全体の中でどのくらいの割合なのかも気になります。
まだまだわからないことが多いですが、今後の研究が期待されます。
参考記事:大人になってから「多動性障害」発症の可能性も?研究結果が話題に/注意欠陥多動性障害、成人期に発症も 研究