「詐欺師症候群(Impostor syndrome)」という言葉を聞いたことはありますか?
まだ日本では馴染のない言葉かもしれません。「詐欺師症候群」は1978年に心理学者のポーリーン・クランスとスザンヌ・アイメスが作り出した言葉です。
「高い業績をおさめたが、その成果を認めることができない人」を詐欺師症候群(Impostor syndrome)という言葉で呼んだのです。
これらの人々は、他の人から(高い業績をおさめたのにもかかわらず)「詐欺師」と言われるのを恐れるのです。しかしもちろん「詐欺」ではありません。彼ら/彼女らの業績は努力の結果です。
映画『ハリー・ポッター』シリーズに出演した女優のエマ・ワトソンも「詐欺師症候群」であることを告白した一人です。女性に多いとも言われています。
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ADHDの人は詐欺師症候群になりやすい?
専門家によると、ADHDの人の中にもこの詐欺師症候群のような状態になる人が多数いるそうです。
その理由の一つは、ADHDの人は他人に本当の姿を隠しがちだからです。
たとえば上司や同僚はADHDの人を賢くて結果を出す人だと思っています。しかしADHDの人はそのような評判を維持するために、陰では誰よりも長い時間働いているのです。締切を守るために徹夜をしたり、プライベートの時間を削ったりしています。
このADHDの人の苦労を知っているのは配偶者や身近な家族だけです。ADHDの人は自分の一部を隠しているのです。
そしてこの秘密が恥と罪の感情を生み出すのです。またもし「本当」の自分の姿が他の人に知られたらどうなってしまうのだろう・・という恐怖の原因にもなります。
これがADHDの人が詐欺師症候群になる理由のようです。ADHDの人は自分の一部を隠すことで、まるで詐欺を働いているような気持ちになるのかもしれません。
心理学者のジュディス・S. ベックは、詐欺師症候群の人の特長を分類しました。以下がその特徴です。
詐欺師症候群の特徴
1.「自分の成功を信じられない」
自分の成功が、自分のせい(自分の努力や、賢さ、創造力など)だと信じられません。
代わりに、「運」や「まぐれ」などと思うのです。
2.「成功を祝福しない」
たとえ成功したとしても、それを祝福しません。
その代わりに次にやらなければいけないことにばかり目を向けます。
3.「上手くいかなかったことにばかり目を向ける」
多くの時間、上手くいかなかったことばかりに向けを向けます。
たとえそれが小さな失敗だったとしてもです。
4.「誉められるに値しない人間だと思う」
自分の成し遂げたことや、他人から誉められることを無視します。
自分は誉められるような人間ではないと思ったり、もっと良くできたはずだと思うのです。
5.「常に他人と比較する」
常に他人と比較します。そして常に自分のほうがダメだと思います。
たとえば「他の人は徹夜してプレゼンの準備をしなかったのに、私より上手だった」と思うのです。
詐欺師症候群を克服する方法は?
まずは「詐欺師症候群」という名前を知ることだけでも、安心できるかもしれません。このような症状は自分だけではないと思えるでしょう。
また他に克服する方法は以下です。
「恥を感じない」
ADHDの人は自分の一部を隠すことで恥を感じ、それが相手を騙しているような気持ちになります。
しかしADHDの症状は脳の神経状態が原因であり、ADHDの人の行動が原因ではありません。
ですからADHDであることに恥を感じることはないのです。
「認知行動療法」
認知行動療法は考え方のバランスを整えてくれるので、役に立ちます。
ネガティブなことにばかり注目するのではなく、物事を全体から見る助けになります。
「行動を記録する」
成功をするまでにした行動を記録するのも役に立ちます。
行動を記録することで、成功が自分の行動の結果であることがわかり、成功を素直に祝福できるようになります。
「信頼できる友人や同僚に話を聞いてもらう」
一人であれこれ考えるよりも、友人や同僚などに話を聞いてもらうほうがいいようです。
特に自分の仕事の分野に詳しい人や専門家がいいでしょう。
参考記事:ADHD and Imposter Syndrome / 自分の能力を過小評価するあまり、成功すると周囲を騙しているように感じてしまう「インポスター・シンドローム(詐欺師症候群)」とは?